貿易取引条件 インコタームズ とは

インコタームズ画像貿易の仕事

貿易では、ICC(国際商業会議所)が制定したインコタームズという貿易取引条件を基本として契約が結ばれます。

インコタームズでは、費用、例えば、運賃、保険料等の負担者と、リスクの負担者を定めています。

費用の負担とは、簡単に言えば、宅配便で荷物を送るとき、送料を元払いにするか、着払いにするかというような事です。

貿易では送料の他にいろいろな費用が買主(輸入者)に届くまで発生します。細かい部分まで一つ一つ決めておくことは大変です。インコタームズでは細かく費用の負担者を定めていますので、取引上のトラブル防止に繋がります。

リスクの負担とは、貨物に事故が発生した場合、売主(輸出者)あるいは買主(輸入者)のどちらが責任を負うかということです。簡単に言うと、インコタームズで決められた地点の手前で事故が発生した場合は、売主(輸出者)の責任となります。決められた地点以降は買主(輸入者)が責任を負うことになります。

売主(輸出者)としては、リスク負担の地点が近ければ近いほど、輸送時のトラブルの責任が小さくなり、遠ければ遠いほど責任の範囲が大きくなります。

インコタームズは、1936年に制定され、その時代の輸送方法や取引の変化により、最近では、2000年、2010年、2020年の10年毎に改訂が行われています。

最新の2020年バージョンは、時代の変化を取り込んだものなので、これを利用することが好ましいですが、売主と買主の合意の上で旧バージョンを使用することもできます。

契約では、インコタームズの何年度バージョンを使用するかを明記して置くことを忘れないようにしてください。

いずれにしても、インコタームズの内容をよく理解して契約に盛り込むことが貿易では不可欠です。

インコタームズの条件と呼び方

インコタームズでは、費用(運賃、保険料等)の負担者と、リスクの負担者を定めています。

貨物の通過地点をいくつかに区切って費用とリスクの負担が売主(輸出者)から買主(輸入者)へ移るポイントを決めています。

これらを3文字のアルファベットで表現することによって、国が違っても誰でも間違いなくそれぞれの費用負担とリスク負担が判断できます。

上記の黒板の青の部分が3文字で表したそれぞれの条件になります。

貨物は左側の売主(輸出者)から右側の買主(輸入者)へと流れていきます。ピンクの枠は、売主(輸出者)がリスクを負担する部分で、赤い矢印は売主(輸出者)が費用を負担する部分です。

現在では、コンテナ貨物が主流になってきていますので、コンテナ貨物用に推奨されたインコタームズを基本的に使用しますが、コンテナ貨物が導入される以前に設定された在来船をベースにしたインコタームズをコンテナ貨物にいまだに使用しているケースもあります。

インコタームズ <いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則>

EXW
Ex Works (insert named place of delivery)
工場
渡し(指定引渡地を挿入)

EXWは、売主(輸出者)が、工場や倉庫に貨物を準備しておき、買主(輸入者)が手配した運送業者に引き渡した時点で、費用負担とリスク負担が買主(輸入者)へ移る条件です。

積み込み作業は、買主(輸入者)が行います。

輸出通関手続きは、買主(輸入者)が行いますが、通関申告者には日本の居住者以外はなれないため、非居住者である、買主(輸入者)は、申告を代行してくれる日本国内の業者の手配が必要となります。

売主(輸出者)が、輸出手続きに慣れていないため、工場渡しとなるケースもありますが、買主(輸入者)としては、引き取りからすべての費用を自分で手配した方が、費用の中身もチェック出来てコストダウンにつながるとの考え方から、EXW条件を要求してくるケースが多くあります。

輸送手段や輸出申告について細かい部分の確認がないまま進めると、船積の時点でトラブルが発生することが多々あります。

売主(輸出者)としては、リスク負担の部分が少ないので、一見良くみえますが、買主(輸入者)が輸出申告できないと言ってくるなど色々なトラブルで振り回されることもありますので、EXWの利用には十分注意をしてください。

FCA
Free Carrier (insert named place of delivery)
運送人渡し(指定引渡地を挿入)

FCAは、輸出地で買主(輸入者)が指定した運送人に引き渡した時点で、売主(輸出者)から買主(輸入者)へ費用負担とリスク負担が移る条件です。

コンテナ貨物の場合は、コンテナヤードに搬入した時点から費用負担とリスク負担が買主(輸入者)に移ります。荷卸しは、買主(輸入者)が行います。

引き渡し場所が売主(輸出者)の施設内の場合は、売主(輸出者)が積み込みまでの責任を負いますが、それ以外の場所の場合、荷卸しは買主(輸入者)が行います。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

CPT
Carriage Paid To (insert named place of destination)
輸送費込み (指定仕向地を挿入)

CPTは、輸出地で売主(輸出者)が指名した運送人に貨物を引き渡した時点で、売主から買主(輸入者)へ危険負担が移る条件です。

CPTでは、引き渡し義務が完了した後でも、指定仕向地までの輸送費用は売主(輸出者)が負担します。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

CIP
Carriage and Insurance Paid To (insert named place of destination)
輸送費保険料込み (指定仕向地を挿入)

CIPは、輸出地で売主(輸出者)が指名した運送人に貨物を引き渡した時点で、売主から買主(輸入者)へ危険負担が移る条件です。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

前述のCPTとの違いは、売主(輸出者)が、海上保険(正式には「外航貨物海上保険」)を契約します。

DAP
Delivered at Place (insert named place of destination)
仕向地持込渡し (指定仕向地を挿入)

DAPは、輸入国の指定仕向地において、輸入通関前の輸送手段の上で荷卸しの準備ができた状態で買主に引き渡し、その時点で費用負担とリスク負担が買主(輸入者)に移る条件です。荷卸しは買主(輸入者)がおこないます。

輸入通関手続きは、買主(輸入者)が行います。

DPU
Delivered at Place Unloaded (insert named place of destination)
荷卸込持込渡し (指定仕向地を挿入)

DPUは、輸入国の指定仕向地で、商品の荷卸しを行った後、費用負担とリスク負担が買主(輸入者)に移る条件です。

荷卸し以降の費用負担とリスク負担を買主(輸入者)が負うDAPとは異なり、売主(輸出者)が荷卸しまでの費用負担とリスク負担をするため、DAPよりも売主( 輸出者)の負担範囲が広い条件と言えます。

輸入通関手続きは、買主(輸入者)が行います。

DDP
Delivered Duty Paid (insert named place of destination)
関税込持込渡し (指定仕向地を挿入)

DDPは、輸入国の指定仕向地での輸入通関後に、費用負担とリスク負担が買主(輸入者)へ移る条件です。輸入通関手続きの費用や関税、その他の税金も売主(輸出者)の負担になります。

インコタームズ11条件の中で最も売主(輸出者)の負担が大きく、買主(輸入者)の負担が小さいのが特徴で、輸入国内での通関や輸送費用も売主(輸出者)が負担する条件は、このDDPだけです。

フォワーダーを通しても、売主が輸入国での通関許可を取得できないような場合は、DDPを避けるべきです。

インコタームズ<海上及び内陸水路輸送のための規則>

FAS
Free Alongside Ship (insert named port of Shipment)
船側渡し (指定船積港を挿入)

FASは、指定船積港で本船の船側に貨物を置いた時点で、売主(輸出者)の引き渡し義務が完了します。その時点から一切の費用負担とリスク負担が買主(輸入者)に移る条件です。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

FOB
Free on Board (insert named port of shipment)
本船渡し(指定船積港を挿入)

FOBは、指定船積港で本船の船上に貨物を置いた時点で、売主(輸出者)から買主(輸入者)へ費用負担とリスク負担が移る条件です。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

CFR
Cost and Freight (insert named port of destination)
運賃込み (指定仕向港を挿入)

CFRは、売主からの商品の引き渡し場所、リスク負担の範囲はFOBと同じ、指定船積港で本船の船上に貨物を置いた時点ですが、指定仕向港までの貨物の運送費用は売主(輸出者)が負担する条件です。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

なお、CFRは「C&F」と表現されることもありますが、契約書などでは正式名称である「CFR」表記を使用しましょう。

CIF
Cost Insurance and Freight (insert named port of destination)
運賃保険料込み (指定仕向港を挿入)

CIFは、売主(輸出者)からの引き渡し場所、リスク負担の範囲はFOB・CFRと同じ、指定船積港で本船の船上に貨物を置いた時点ですが、指定仕向港までの貨物の運送費用と保険料を売主(輸出者)が負担する条件です。

輸出通関手続きは、売主(輸出者)が行います。

なお、FAS、FOB、CFR、CIFの4つの条件は、現在主流のコンテナでの船舶輸送ではなく、コンテナでは対応できない形状のものを運ぶ「在来船」での輸送を対象としています。

現在では、コンテナ貨物が主流になってきていますので、コンテナ貨物用に推奨されたインコタームズを基本的に使用しますが、FOB, CFR, CIFなどは、過去の流れから現在も使用されるケースがあります。

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