商工会議所が発給する、製品の原産国を証明する書類で、Certificate of Originと呼ばれる証明書です。この原産地証明書は、輸入国での関税を引き下げる特恵関税用のものではないので、商工会議所や税関は、非特恵原産地証明書と呼び、経済連携協定(EPA, FTA)で利用される特定原産地証明書と区別しています。
原産地証明書(非特恵原産地証明書)は、製品の原産地(国籍)を証明するもので、輸入者や信用状(L/C)などの要求により、輸出者が商工会議所(輸出組合、商工会もあるが少ない)に発給申請をして入手します。
原産地証明書(非特恵原産地証明書)を商工会議所に発給してもらうには、商工会議所への事前の手続きが必要となります。
原産地の判定基準に基づき、申請者(輸出者)自身が判断した原産地が正しいとして商工会議所は認証しますので、ルールをよく理解して判断を間違わないように十分注意が必要です。
発給申請方法
原産地証明書(非特恵原産地証明書)の発給を受けるには、下記の手順で輸出者が商工会議所に申請をします。
登録~発給のながれ
- 登録に必要な書類
・誓約書
・真実かつ正確な書類にて申請を行うこと
・疑義が生じた場合は、商工会議所の定めた条件によって処理し、迷惑をかけない
・登記簿謄本
・代表者の印鑑証明書
・サインの届出 - 発給申請書作成、提出
- 原産地証明書認証(発給)
原産地の判定ルール
原産地証明書(非特恵原産地証明書)の原産地判定基準は各国で決められていますが、日本では輸出産品に対する判定基準が存在しないため、商工会議所では輸入時に適用される原産地の判定基準を準用しています。
商工会議所が原産品(日本産品)とする基準は下記になります。
①完全生産品
日本で完全に得られまたは生産された産品
例えば、日本でとれた鉱山資源や動植物、魚介類などが典型的なものです。
②実質的変更基準を満たす産品
外国産原材料を使用していても製造された産品が変更基準を満たしていれば日本産品と認められるものです。
輸出入の税関申告の際、「 商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて貨物(産品)が該当するHSコードに分類されます。
外国産原材料を産品の生産に使用した場合、その外国産原材料のHSコードに対して、輸出する産品のHSコードが変わっていれば、実質的変更基準を満たすということで日本産品となります。
簡単に言うと、
HSコードが変わるということは、原材料が別のものに生まれ変わったということで、生まれ変わらせた国を原産地とするということです。
実質的変更基準、HSコードが変わるということは?
商工会議所は、関税法施行規則第1条の7(実質的な変更を加える加工又は製造の指定)の判定基準を準用しています。
外国産原材料(原産国未確認を含む)を使用して生産されたもののうち、実質的な加工や製造がなされたもの、原則として生産された産品のHSコード上4桁が、その生産に使用された外国産原材料のHSコード上4桁と異なる加工または製造が日本で行われているものについては日本産品とするということです。
ちなみにHSコードは6桁で構成されていますが、商工会議所の原産地判定には上4桁が使用されます。
文字での説明はやや難解なので次の具体例を参照ください。
実質的変更基準についての具体例
例えば、輸入タイ米(HSコード1006)を使用してせんべい(HSコード1905)を日本で製造した場合、日本での製造によりHSコード1006から1905へ変更があったので日本産品と判断されます。
原産地証明書(非特恵原産地証明書)の判定基準はHSコードの上4桁となりますが、経済連携協定(EPA,FTA)での判断基準はそれぞれの協定で異なりますので、ここで日本産品となっても経済連携協定では日本産品と認められないケースもあります。
HSコードについては、こちらへ
注意! 原産品(日本産品)ではありません
ここではいくつか原産品にならない例をご紹介します。
日本で生産されるレギュラーコーヒーは、輸入生豆を焙煎し、豆タイプの場合はそのまま包装、粉タイプの場合は粉砕して包装されます。スーパーの棚には海外で生産されたレギュラーコーヒーは輸入品として販売されているので、日本で生産されたものは日本産と考えるのが普通です。この考え方で原産地証明書の発給を受けると誤った申請となり商工会議所の罰則規定に基づき処分されます。
コーヒーの場合、生豆、焙煎豆・粉砕品(レギュラーコーヒー)は、HSコードが全て同じであることから、HSコード上4桁の変更が行われません。したがってレギュラーコーヒーの原産国は生豆の生産国となります。
なお、インスタントコーヒーは、上記に抽出、乾燥工程が加わった結果、HSコードが2101へ変更となり、実質的な加工がなされたものとして原産品(日本産)となります。
もう一例、よくあるケースです。
最近は加工食品を海外で製造し日本へ輸入するケースが増えています。
これらに使用される、スパイスなどは現地で調達した方が安くて納期も速いのですが、日本では認められていない、添加物や殺菌方法が用いられるリスクがあるため、日本から輸出するケースが多いです。
加工食品に使用されるスパイスの多くは、輸入原料を日本で殺菌、粉砕、選別、包装を行なったものです。中国から乾燥した唐辛子(HSコード0904)を輸入して、唐辛子粉砕品(HSコード0904)を製造しても実質的な加工がなされたこととは認められないので、原産国は依然として中国です。
日本で栽培できない、コショウのようなスパイスは見る人が見れば、日本の原産品でないことは一目瞭然です。
原産地証明書(非特恵原産地証明書)の発給申請は細心の注意を!
原産地証明書(非特恵原産地証明書)の発給申請ができる者は、輸出者です。
輸出者が製造者(メーカー)であれば、製品(産品)が、どのような原材料を使用して、どのような加工をどこで行ったかの製造情報を認識しているので、原産品(日本産品)であるかの判断は可能です。
しかし輸出者が製造者でない場合、例えば商社のような場合は、製造者からの情報がなければ原産品であるかの判断ができません。商工会議所のホームページでは、誤った申請が発覚して発給停止処分となった事例がどきどき掲載されています。発給申請者名は公表されませんが、発給停止となれば、業務に支障をきたすことは間違えありません。
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